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preschool teacherを自覚した初夏のある日

州知事選を秋に控えたカリフォルニアでは、TVでも候補者の映像が流れるようになりました。個人的に現職の共和党知事の再選は不満でありながらも、その知名度(今はこれだけが彼の強み)に対抗する民主党からの候補者がいまいち弱いことを受けて、よほどの存在感を示さない限り現職に打ち勝つのは実は難しいんじゃないかと見ています。

その民主党からの、候補者二人(これから民主党内で絞る)が主として掲げる政策、公約は様々ですが、その一つが教育問題であることは間違いありません。

現職知事が支持率を大きく下げた最大の理由の一つは、簡単に言えば知事が教育予算を削減したことによるものです。その結果、庁舎前などで抗議運動を行う人の持つプラカードには、次のようなことが書いてありました。うろ覚えの下手な日本語訳ですが、

「知事よ、子供はこの国では最大の関心事である」

これは、たとえ今は宣誓し、忠誠を誓った立派なアメリカ市民でも、アメリカ国外の教育を受けて育った移民である知事に対する最大のあてつけであると思います。そして、このプラカードの主張は事実であり、それにもかかわらず、カリフォルニアの公立学校が小学校から大学に至るまで常に低予算に苦しんでいる現状も事実です。その結果、州の教育水準がアメリカ国内で最低に近い数字を示しているのも事実です。それを少しでも解決できる知事こそが、少なくとも教育機関に身をおく自分としては最大の知事選びでの焦点でもあります。

実際、彼ら候補者はそれなりの主張をしています。教育問題に疎い(と称される)現職知事に対抗する意味でも。
続き

しかし、このカリフォルニア知事選についての、とある日系新聞記者さんのブログに、以下のコメントがありました。抜粋しますと

「プリスクールの内容は、おうちで親が教えられるし」
「プリスクールはやっぱり後回しかな。」

これだけではコメントした方の意にそぐなわないでしょうし、後日談もあるので、全文をこちらからどうぞ。

正直、この言葉は私にとっては聞き捨てならぬ言葉でした。
特に、前者に対しては、です。preschoolは単なるベビーシッターではありません。歌をうたって、絵を書くだけでもありません。そういったカリキュラムだけであれば、それは家で親とも出来るでしょう。しかし、親、兄弟だけの仲で育った子がkindergartenで何の問題もなく何十人の中で初めての社会生活を迎えられるのでしょうか?私はそうは思いません。

後者のコメントをした方が「無理にプリスクールに行かなくとも、家でのんびり準備した方が合う子もいますし」ともコメントされています。それも事実かもしれませんが、準備とは何の準備でしょう?6歳になる頃に始まるkindergarten、そしてその後の小学校への準備でしょうか。それは、例えば「はさみを使えること」「文字を書けること」などだけなのでしょうか。違います。

preschoolで初めて触れる、親と離れた時間、友達との時間、先生(親以外の大人)との時間、あるいは社会の中での自分の存在意識、他者とのコミュニケーションの仕方、(おもちゃを取り合うなどの)葛藤との出会い、その解決の方法。それらを学んでから、はじめて本当の学校生活という社会に入るのです。それがpreschoolの役割です。kindergartenでは、もうそこまで直接指導することはあまりありません。

だから、大げさに言えば、子供に対する先生の一つ一つの言動がその子のこれからの一生を決めるかもしれない、と思うくらいの自覚を学校で学び、仕事でも経験しました。先生の自覚の差こそあるでしょうが、professionalとして、誰もが一度はそう教え込まれているはずです。私は日本で幼児教育の勉強も教諭としての経験もありませんが、日本の幼稚園も基本はこのような方針であると信じています。

その場ではとりあえず一言しか書かなかった私のコメントに対する記者さん本人のコメントは多少意が異なり、先に述べた私の意見からわかっていただけると幸いですが、どこの先生もきっと自分の教える時期(小学校や中学校など)が一番大切だと信じているでしょうから、州の予算分配の優先順位云々、preschoolの義務教育化問題が私の焦点ではありません。ただpreschoolの存在意義というものに対して上記最初のコメントからあまりにも希薄な印象を受けた為、私の立場としては、preschoolってなんだろう?なんの為にあるんだろう?と改めて自分自身で考え、そして何らかの反応を示すべきだと考え、この、多少場違いなブログでコメントさせていただきました。

「後回し」についても、コメントのご本人の意見というよりも結局はそれが州のやり方だということも納得しています。その点ではある意味、今回の私のコメントは州政府(知事)への意見でもあるかもしれません。

なぜアメリカの学校はここまで金がないのか、については後日また述べたいと思います。。。(覚えていたら)

COMMENT LIST

Parsley URL 05/14/2006 11:51 Edit

後回し、家でのんびり、と書いたのは私です。正面からの真摯な記事をありがとうございます。じっくり拝見しました。一つ私も言葉が足りなかったのは「家での準備」ということについて。環境があればのりやハサミ、数、ABCなどは時期がくればスポンジの様にあっという間に子供は吸収していきますから大きな問題だとは思っていません。準備と考えていたのが親と子の心のつながり(土台)そして、そこから子供社会へ飛び出して行くための精神的、身体的準備の意味で、ドラパンさんの書かれた社会性の育成の前段階も考えていました。あくまで「義務化」を前提とした思考の流れで、中にはこのプロセスに時間がかかり、とてもゆっくりなお子さんや、大きな集団の中ではなく数人の小集団での方が向いているお子さんを思い浮かべ、義務化と言われると中にはつらい子もいるだろうなぁということでした。(沢山扱っていたので。)多様な子供への対応を考えると義務化と言ってもたやすいことではないですし、Preschoolへ入れる事で親が安心してしまって家庭での努力を怠ることへの危惧もあります。言葉がもの凄く足りなかった様ですみません。

小学校についてはキンダーが未だに義務教育ではないですし、新規図書購入費が予算ゼロ、理科室が無い、学校によっては音楽や美術や体育が無いということもごくあたりまえの状況をふまえて、preschooを義務化するならば、これらの問題を何とかすることを考えてからではないか、という意味で後に回して欲しいと書きました。
あくまで「義務化」の流れで書いた話なので、お気に障られましたら失礼しました。プリスクールの意義については書いて下さったことに大いに同意します。

予算不足って言うのは国防予算や生活保護予算が多い、公務員が多過ぎるとかですか?次の記事を楽しみにしています!(一度書いてから出かけましたが、帰って来てから少し編集しました)

ドラぱん URL 05/14/2006 18:35 Edit

どちらの候補者か記憶が定かでないのですが、「自分の子供は公立校に通っていた/いる。」
という表現がありました。

つまり彼は「公立校がどういう状況かを知っている」といいたいのか、それとも「庶民派」を強調したいのか(笑)

義務教育化は私としては賛成です。
もっとも、それによって予算低下はもちろん、さまざまなプログラムやカリキュラムの学校が増え、parsleyさんのおっしゃるように、さまざまな子に対応できる、つまり学校の選択肢が増えることを期待できれば、です。

そういう意味では小学校事情もふまえ、実現はかなり難しいと思いますけどね・・・(-_-)

Parsley URL 05/16/2006 09:41 Edit

自分の子供は公立校に、っていうの、私も見ました。ふーん、それでアピールポイントになるのね、と思った覚えがあります。
今の知事になってから、うちの学校区の予算も一時期の半額なんじゃないかな。それでいて児童生徒の数は凄く増えている。以前の蓄えを切り崩してレベルを維持しているそうです。
足りない分を親が寄付するのはいいんだけれど(財布的にはあまり良くないけれど)、寄付を管理する団体の職員費用とか雑費でかなりもっていかれます。どうも何か効率よく機能しないんですよ。どうしたものでしょう。
教育が選挙の一つのポイントになるのはいいことですね。将来的には公教育化、できれば多様なプログラムの充実した義務化ができたら素晴らしいですよね。いつかそんな日が来るのかな。

記者Y URL 05/18/2006 22:06 Edit

>記者さん本人のコメントは多少意が異なり
→すみません。これは私です。私のブログは更新が早い上にトラバがないので議論が深めにくい環境です。それでとにかく感情論で終わるのを避けようとして、場の収拾を第一に図らせていただきました。こちらで深く議論されていて良かったです。

ドラぱん URL 05/19/2006 23:13 Edit

parsleyさん

実行できるかはともかく、教育改革を何も公約しない候補者はアメリカでは受け入れられない感じですねー、やはりその辺を州知事はわかってんのかって思うときもありますが、実際は難しいんでしょうね。

私個人としては、移民(法的立場を問わず)が多さが、カリフォルニアが州予算を教育費にまわす%が全国49番目に位置している理由の一つじゃないかと思ってます。

まあこれも、もう少し勉強してから書きたいと思いますが。。。

ドラぱん URL 05/19/2006 23:17 Edit

記者Yさん

まあ、あれ以上コメントすると荒らし状態になりますので(笑)
あとは、言い出した以上は責任持ってこちらで引き受けました。。。

私も自分の主張をきちんと言いたかったので。

とりあえずお騒がせしました(^^ゞ